娘はどちらかというと聴覚優位です。ピアノの練習でそれが著明に出ます。基本的に楽譜はあまりみません。なので、突拍子の無いことが起きたりします。自分で音を足してしまったり、音を変えてしまったりするんです。無意識にこっちの音の方がいい♪って。響きは問題ないので、横で楽譜をしっかり見ていないとそれが起きていることに私は気づけません。レッスンのときに指摘されて発覚するのです。曲は簡単なものだと数回聞けば暗譜します。
幼稚園の頃から、お遊戯などで先生が弾いた曲を耳コピして、家で弾いていました。預かり保育の日は、みんなの前で弾いてそれに合わせてお友達が歌ったりしていました。幼稚園ではピアノが上手な子として有名になりました。ピティナに出ている子は多かったですが、あくまで地元のピアノ教室でした。娘も、コンクールで表彰された子が報告に来ているのを見て、「出たい!」というのも時間の問題だなと思っていました。
年長さんからコンクールに参加するようになりました。ピアノ教室では進度が早い子としてこれまた有名になっていきます。けれど、曲の雰囲気が怖いと弾けないということもありました。今思えばHSCの特徴だなと思います。その頃は、感受性豊かなんでしょうと、怖がる曲はスキップしていました。初めて参加したコンクールはピティナでした。トロフィーをもらって帰ってきました。それから、違うコンクールにも出るようになりました。ショパンコンクールinアジアやバッハコンクールなど。予選を通過できなかったのは1回だけです。毎回全国大会に進めるわけではありませんが、それなりの結果をおさめていました。
そしてここでも事件が起きます。ピアノ教室を変わりたいと言い出したのです。理由は、「私の弾きたいように弾かせてもらえない。ボス先生が嫌だ。(つばも飛んでくる!)」と。普段はかわいらしい若い先生が担当してくださって、コンクールの予選もその先生が見てくれるんですが、予選を通過したあとからあらわれるボス先生(教室長みたいな)のやり方が娘は嫌なのです。ボス先生は、コンクールに通過するための指導をします。けれど、娘には娘なりの曲の解釈があり、弾きたい表現があるらしいのです。娘は自分の演奏を否定される経験を何回もすることになり、どんどんボス先生との距離ができてしまいました。担当の先生は、ボス先生から娘を守るよう頑張ってくれていましたが、今後もコンクールに出るたびにこうなるのではつらいので、教室を変わる決意をしました。あと、もう一つ別の理由もありました。ずっと30分の枠でやっていたのですが、生徒数が多すぎて60分の枠にのばせなかったのです。その頃はもうインベンションに入っていましたし、30分では見切れない状態でした。
小3で教室を変わりました。個人の教室で、生徒数も以前の教室と比べたら十分の一くらいです。60分の枠でお願いし、しっかり指導を受けることができるようになりました。60分になったので、前にも増してめきめき上達しはじめました。すると、私の手におえなくなってきました。それまでは、私にもピアノ経験があるので音の間違いに気づいてやれたのですが、私がやっていた領域を超えてしまい、楽譜自体も難しく、娘が勝手に音を足したり変えたりしているのに気づけません。そうすると、レッスンのときに音の間違いで注意されるわけです。先生からすると、その曲の作曲家や時代背景なんかも考えて曲想作りをされ、指導されているわけです。娘の令和なアレンジなんてもっての他なわけです。しばらくは、このことに娘はとてもイライラしていました。そこで、アレンジしないようにたくさん耳から音をいれることにしました。表向きは、色んな演奏を聴くことで、自分の好きな表現の仕方をみつけるという理由にし、実際は耳から楽譜を起こさせるのです。楽譜を見ないのことで自分のアレンジに気づけないなら、耳から気づかせようと。このやり方は功をなして、アレンジすることが極端に減りました。けれど、娘のアレンジの力を排除するのはもったいなぁと思うので、作曲を積極的にすすめました。楽譜を読む必要がないので、これは娘にとてもあっていました。
娘の作曲は自分で勝手にやっていることもありますが、私がお題をふるときもあります。「子豚が滑って尻もちをついちゃった」っていうタイトルで作って!とか、「晩御飯を作るのが面倒くさいお母さんの気持ち」というタイトルで!とか、かなりの無茶ぶりをして遊んでいます。娘の表現がもろにあらわれていて、これでうまく発散できているのではないかなと思っています。そうすると今度は、自作の歌が始まりました。マイクラしながら自作曲を歌っているんですよね。マイクラの方は消音です。聞き耳を立てると恥ずかしがって怒るので、気づいていないふりをしています。
5時間授業をして、それからピアノも見てるので、本当に私は娘につきっきりです。勉強はさぼれても、ピアノはさぼれませんから。「横にいてね!」って言われます。ハノンなど指の体操のときはダイニングでコーヒーを飲みながら聞いていますが、練習曲のときは真横に座ってみています。たまに、娘のスイッチが入ることがあり、そうすると「うわぁ」って感動する演奏をすることがあります。その時は、こっちが動くことを忘れてしまい静止してしまうほどです。めったりにありませんけどね。基本的にはスピード命で、ゆっくりな曲もアレグロで弾いてしまいます。
娘の体格は小さくて、今だに足台と補助ペダルが必要です。もちろんそんなお子さんはたくさんいるのですが、娘が目指してきたのは、全日本学生音楽コンクールです。日本で一番難しいとされるコンクールです。小学生の部は小4からしか参加できず、おまけに小4~小6でひとくくりです。体格差でまず不利です。予選曲が4曲あり、すべて難しいのです。なので、予選に出ることがまず難しい。おまけに1オクターブに指が届かないので、娘にはさらに不利です。片方の音をカットすることは可能ですが、表現力としてはどうしても落ちてしまいます。今年はコンクール自体行われるかわかりませんが、初めての学生コンクールの準備をしています。クラーマービューローから2曲、シンフォニア1曲、スカルラッティのソナタ1曲、そして本選用のドビュッシー、計5曲です。ピティナの4曲とはわけが違いますね・・・。今の感じだと予選通過は無理ですが、学生コンクールに挑戦できたという経験はとても力になると思います。
このエピソードもギフティッド特有のものなのかな?と思ったりしています。今の先生とは、レッスン中に音で喧嘩しています。イライラすると先生の話を聞かず、先生がお手本を弾いてくださっているのに、自分の音をかぶせてきますからね。「言われんでもできるわ!」みたいな。先生、いつもすみません、この場を借りて。